首都機能は真の日本の真ん中に
1999年09月04日
by OUTSIDE
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首都機能は日本の真ん中に移転すべきです。オーストラリアのキャンベラ、西ドイツのボンなど、海外の例を見ても、首都は国土の真ん中に位置しています。アメリカ独立13州時のワシントンも、ドイツ帝国のベルリンも、首都決定当時は国土の真ん中でした。地域に偏らず、国土の均衡ある発展のためにも、新首都は日本の真ん中に位置する必要があります。では、日本の真ん中はどこなのでしょうか。
首都決定時の領土 参考:遷都(中公新書)
まず思い浮かぶのが人口重心でしょう。人口重心は現在岐阜県にありますから、岐阜県のあたりが日本の真ん中とも言えますが、昔は人口重心が滋賀県にありました。滋賀県から岐阜県に人口重心が東に移動したのは、東京一極集中の影響です。首都機能移転の目的のひとつに、東京一極集中の是正があることから、人口的に見た本当の日本の真ん中は、滋賀県と見るのが適当でしょう。
人口重心の移動 参考:東京集中が日本を滅ぼす(講談社)
全国からの集散時間や費用の平均が一番小さくなるのは、地理的な日本の中心部です。日本地図で見た場合の日本の真ん中はどこになるのでしょうか。中部地方を中心に円を描くと、北海道から鹿児島までが入りますが、これでは沖縄を排除したことになってしまいます。北海道から沖縄本島までが入る円を描くと、紀伊半島の北部が中心になります。ここを中心にすると、名古屋と大阪、東京と広島、仙台と福岡という各地方の中心都市ともほぼ等距離にもなります。円を大きくすれば択捉島から石垣島までが入り、紀伊半島北部が地理的に日本の真ん中だと言えるのではないでしょうか。
地理的な日本の真ん中を考えるときには、日本海側と太平洋側という観点から考える必要もあります。日本海と太平洋間の距離が最も短くなるのは、若狭湾と伊勢湾の間です。日本海側のJR山陰本線は京都が起点であり、大阪始発の北陸本線を走る特急も京都を通り、太平洋側を走る東海道山陽新幹線も通ることからも、日本海側と太平洋側の結束点は京都であると言えるでしょう。
地域に偏らない政治行政を行うには、行政的に日本の真ん中であることが望ましいです。日本には47の都道府県がありますが、福井県、滋賀県、三重県を境に、東西に22都道府県ずつに分かれることになります。よって、この3県が行政的に日本の真ん中と言えるでしょう。また、国土庁の全国総合開発計画では、北海道、東北、関東、北陸、中部、近畿、中国、四国、九州、沖縄と10地域に分けられています。これを5地域ずつに分ける場所も、同じ、福井県、滋賀県、三重県になります。
丸餅と角餅、ウナギの割き方、うどんのつゆなど、日本の文化は東西で大きく分かれています。日本全国に地域に偏らない多様な文化を発信するためにも、首都機能移転先の新都市は、東西文化の境界上に位置することが求められます。東西の文化は関ヶ原で分かれることはよく知られています。この境界を延ばすと、新潟から三重までが東日本文化圏、富山から和歌山までが西日本文化圏ですが、東日本文化圏に入る三重県は、伊賀地方のみが西日本文化圏に入ります。これらは、JR東海とJR西日本のエリア境界と完全に一致しており、JR東海とJR西日本の境界線が、東西文化の境界線と言うことができます。
東西の方言・アクセントの境界線は、東西文化の境界線とは少し違い、三重県全域が西日本方言・アクセントのエリアに入ります。三重県だけが東西の両方に入り、文化的な日本の真ん中は、三重県と言えるでしょう。
首都機能移転の経済効果を、地域に偏らずに日本全国に及ぼすためには、経済的に日本の真ん中であるところに新都市を建設する必要があります。東京を中心とする東日本経済圏と、大阪を中心とする西日本経済圏で考えたとき、この境界は、文化と同じJR東海とJR西日本の境界線で分かれると言えます。また、この境界上は、名古屋を中心とする中部経済圏と、大阪を中心とする関西経済圏の結束点ととらえることもでき、両圏の経済力を十分に活用できる場所でもあります。
首都機能移転先の新都市は、全国からのアクセスが便利な、交通の中心である必要があります。東京は全国から新幹線や高速道路が集中する交通の中心です。大阪と名古屋も、新幹線や高速道路が集まってくる交通の要所で、大阪・名古屋間には、東海道新幹線、計画中の中央新幹線、東名高速道路、東名阪・西名阪高速道路、建設中の第2名神高速道路、計画中の近畿自動車道名古屋大阪線、JR東海道本線、関西本線、近鉄名古屋・大阪線など、多くの交通網が多重に整備されています。関西空港、中部新空港の2つのハブ空港が利用でき、北陸方面からの道路や鉄道も集まる、大阪と名古屋の間が、東京と並ぶ、日本の交通の中心と言えるでしょう。
人口重心、地理、行政、文化、経済、交通的に日本の真ん中はどこかということを考えてきましたが、これらすべてに共通する場所こそが、真の日本の真ん中であり、首都機能の移転先にふさわしいと言えます。首都機能移転候補地の中では、三重・畿央地域だけがこれらの要件をすべて兼ね備えているのではないでしょうか。