首都である必要性が感じられない
1999年12月04日
by OUTSIDE
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首都機能の移転先として、8つの県が自薦した場所が、第1次候補地として選ばれました。しかし、県自ら推薦した場所は、考え方が根本的に間違っているのではないでしょうか。本当は、日本にとって最も新首都にふさわしい場所はどこかと全国的な観点で考えなければならないのに、自薦した県は、まず自分の県への移転ありきで検討が始まり、県内ならどこがいいかと場所を決めてから、新首都に向いている条件を探し出したような気がしてなりません。それでは、アピールポイントもこじつけの感が否めず、おのずと限界が見えてくるのではないかと思います。まず、新首都の条件を考え、それに合致した場所を、県境を越えて全国から探し出すべきだと考えます。
土地がある、交通が便利、東京から便利、地震が少ない、自然が豊かなど、北東地域と東海地域の候補地が主張するの条件は、新都市をつくるにはすばらしいですが、首都でなければならないという必然性が全くもって感じられません。そんなにいいところなら、首都でなくても、学研都市でも、ニュータウンでもいいのではないでしょうか。首都機能移転は、日本国の首都をつくろうとしているのであって、学研都市やニュータウンをつくるのではありません。よって、日本国の顔としてふさわしい場所を選定する必要があります。
特に那須地域については、過去に学研都市に立候補し、つくばに敗れたことがあるようですが、首都でも学研都市でも何でもOKというのはいかがかと思います。学研都市やニュータウンには向いていないが、新首都には向いているという場所を選択すべきです。
北東地域は開発が遅れてきた。北東地域は日本のフロンティアである。そのような理由で、北東地域への首都機能移転を推進する声があります。しかし、日本のやろうとしている首都機能移転は、東京一極集中の是正、国政全般の改革、災害対応力の強化が主目的であって、国土の開発が目的ではありません。北東地域の開発のためであれば、前述のように、ニュータウンでも、学研都市でも、特に首都である必要はありません。北東地域は、新首都が出来なくても十分発展できます。
海外では、ブラジルが内陸部の開発のために首都をブラジリアに移したように、国土の開発のために首都機能移転が行われた例がありますが、これらはすべて発展途上国の行ったことです。日本が発展途上国であれば北東地域の開発のための首都機能移転が行われてもいいのでしょうが、日本は違います。先進国である日本の首都機能移転は、世界中から注目されることになります。さすが日本だと思われるような、日本らしさを世界にアピールできる、首都機能移転を成功させる必要があります。
北東地域には、那須岳をはじめとして火山が数多く存在し、融雪泥流などの危険性が多くあります。東海地域にも、御嶽山や富士山があります。火山が噴火をすれば、融雪泥流が新都市を襲い、火山灰が長い間降り注ぐことになります。私たちが生きている間は噴火の心配はないという火山であっても、首都機能移転後の新都市は500年は続くことになるでしょうから、もっと長いスパンで考える必要があります。火山の近くに新首都を建設することは避けなければなりません。
東京から便利すぎるというのも問題です。国会等移転審議会でも、那須や茨城県など東京に近いところに移転すると、「新都市に移らずに東京から通勤する人が出てきて、東京一極集中是正の効果が薄れる」、「東京と新都市との間の交通沿線上の都市化が進み、東京との市街地の連続化が起き、結局は東京圏を拡大するだけになる」、「東京圏の新都市側の地域にウエイトが置かれることになり、東京圏の新都市とは反対側の地域は、地価の下落など、マイナスになることが予想される」等の問題点が指摘されています。東京から便利すぎるところではいけません。
地形についても、良好であればいいというものではありません。地形が良好すぎて、新都市に適した土地が延々と広がっていると、新都市圏の無秩序な拡大が懸念されます。クラスター型に新都市をつくっても、地形が良好であると、各クラスター間の連担が発生し、さらには、近隣の都市とも連担してしまいます。これでは、新たな集中が起こるだけです。良好な地形(=クラスター)が点在し、それらのクラスターの間に山などがあって、新都市と既存の都市との間にも山などの障害物があり、クラスター同士や既存都市との連担が発生しないような場所(=盆地)を選択すべきです。つまり、新都市は、大きな盆地の中の、小さな盆地に配置することで、新都市圏の無秩序な拡大を防ぐことができます。この大きな盆地を囲む山々は、国定公園などの自然公園に指定されていれば、既存都市との連担を防ぐ効果がさらに大きくなると思います。新都市と既存都市との間に、トンネルや渓谷がないと、連担が起こる危険性があります。新都市と既存都市が同じ平野内にあってはいけません。 東京と同じ平野内にあるなどもってのほかです。
東海地域は、太平洋側からのアクセスは便利かも知れませんが、日本海側の北陸方面からのアクセスに問題はないでしょうか。特に鉄道では、名古屋経由で遠回りになってしまいます。道路では、東海北陸道や三遠南信道などが整備される予定ではありますが、暫定2車線のため、新首都へのアクセス道路としてはどうかと思います。
また、新首都の空港には、国際ハブ空港が必要になってきます。しかし、仙台空港、福島空港、静岡空港などは地方空港に過ぎず、国内線はともかく国際線の便数が期待できません。新首都の空港は、関西国際空港と中部国際空港にしかつとまらないのではないでしょうか。
地震については、全国に地震のない場所はありません。海溝型地震からある程度離れ、活断層の真上に建物を建てないように気を付ければ、もし地震が起こったとしても、新都市は最新の建設技術を使って建てられるので、震度5強か6弱程度までなら大きなダメージを与えるということはないでしょう。しかし、東海地震の震源に近いところに新首都をつくると、東海地震により、東西の大動脈である東海道と新首都が同時に被災するという事が起こってしまいます。東京との同時被災だけでなく、東西の大動脈との同時被災も避けなければなりません。
岐阜県は、日本の真ん中だから首都機能移転先にふさわしいと言っていますが、岐阜県は本当に日本の真ん中なのでしょうか? 人口重心は確かに岐阜県にありますが、昔は滋賀県にありました。人口重心が東に移動して岐阜県に入ったのは、東京一極集中の影響です。東京一極集中の解消を1つの目的にしているのですから、一極集中前の人口重心で考えるべきです。都道府県の数では、富山・岐阜・愛知県の東には18都道県、西には26府県があり、東よりです。日本の東西で大きく分かれる文化は、関ヶ原で分かれます。関ヶ原は岐阜県ですが、候補地の東濃地域は岐阜県の東の端ですから、完全に東日本文化圏であり、東よりです。経済的に見ても、完全に名古屋経済圏であり、名古屋圏に取り込まれています。これでは、特定の地域に偏らない政治行政を行うことはできません。どうやら、岐阜県は日本の真ん中ではなさそうです。
しかしながら、首都機能誘致に熱心だった東濃や那須を外すことは難しいかも知れません。そこで、新都市を作るための好条件がそろっていますから、東濃地域には第3の学術研究都市を、那須地域にはニュータウンを建設することを提案します。新首都である必要はありません。
東濃地域を有する岐阜県では、情報産業に対する取り組みが盛んになされています。また、移転審のイメージ調査でも、東海地域は最新情報にあふれた先端的な文化が育つという結果が出ていることからも、東濃地域に「東濃学術研究都市」を建設することを提案します。名古屋にも近く、学研都市には最適の立地条件ではないでしょうか。
那須地域は、東北新幹線で東京に通勤できる距離であり、豊かな自然に恵まれていることからも、緑に包まれたニュータウンを建設することを提案します。那須にニュータウンを建設し、東京の住民を多く受け入れることで、東京の過密を解消します。それに伴い、東京と那須の間、つまり栃木県全体が発展することにつながります。
移転先が決まったところで、最後には、最難関の「東京との比較考量」が待っています。那須や東濃などの北東地域や東海地域で、はたして東京に勝つことが出来るでしょうか? また、石原都知事の言う「江戸以来の歴史文化への冒涜」に反論することは出来るでしょうか? 東京との比較考量で東京に対抗できるパワーを持った場所でないと、首都機能移転そのものが無かったことになります。