首都特別行政区の姿 (改訂版)

1999年05月06日

by OUTSIDE

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 西暦20XX年、48番目の県となる首都特別行政区が誕生しました。新しい首都は、三重県・滋賀県・京都府・奈良県の県境付近の畿央地域に移転し、同時に新首都地域は今までの府県から分離独立して、特別行政区となったのです。新首都の関係自治体は、オラが県に首都をという我田引都・利益誘導型のコンセプトで誘致をすすめていたのではなく、日本にとって最適な首都を建設するために協力するという立場でした。そのため、旧府県からの分離独立問題でも、旧府県の反対も少なく、スムーズに行うことができたのです。

 新首都は、日本の中心として東日本と西日本の中間にあり、東に24都道県、西に23府県とまさに日本の中心に位置しています。東と西で大きく分かれる文化や行政・経済の境界上にあるのです。名古屋と大阪の2大都市のちょうど中間でもあるので、両市の都市機能を存分に活用できる一方、中部圏と関西圏、東日本と西日本への広域的で公平な経済効果をもたらすことにも成功しました。さらに、盆地であるために周囲の山で無秩序な開発がブロックされ、将来他の大都市圏に飲みこまれる心配もありません。

 首都の機能は主に、旧滋賀県の信楽町、旧三重県の阿山町から上野市南部、当時の三重県・京都府・奈良県の府県境付近にかけて、小都市がクラスター状に配置されました。これらの土地はほとんどがもともと公有林や山林、ゴルフ場などで、権利関係もはっきりしていて、土地の取得にかかる費用や時間も予想よりも大幅に抑えることができたのです。山林といってもそんなに険しい山ではなく、なだらかな山でしたので、開発も容易で、自然を生かした都市を建設することに成功しました。

 新首都は全国各地からのアクセスが非常に便利なところです。新首都へと通じる高速道路網として、東京・静岡方面からは、東名高速と第二東名高速があります。愛知県から先は2本の高速道路が整備されていて、第二名神高速は首都地域の北部へ、東名阪道・名阪国道は首都地域の中部へ通じます。この2ルートは互いに交差・連絡道の整備がされていて、片方が何らかの原因で通行止めになっても、迂回して新首都地域へ入ることができます。さらに第二名神は雪の多い関ケ原を通っていませんから、冬場でも雪で交通がマヒすることはほとんどありません。また、計画中の伊勢湾口道路の開通後は、伊勢自動車道を通っても新首都地域に入ることができるようになる予定です。

 新潟・北陸方面からは、北陸自動車道を利用し、名神高速から第二名神に通じるびわこ空港自動車道を通って新首都地域の北部に入ります。また、東海北陸自動車道と東海環状自動車道を利用して、第二名神や東名阪道から新首都地域に入ることもできます。東北方面からは、東京経由の東海道ルートと、東京を経由しない北陸ルートのどちらのルートを使っても新首都地域に行くことができます。

 西日本方面からは、3つのルートが利用できます。西名阪道・名阪国道は新首都地域の中部へ、第二名神高速は新首都地域の北部へ通じます。名神高速からも新首都地域の北部に入ることができます。山陰方面からは、京都縦貫自動車道から名神高速または第二名神を通って新首都地域の北部へ入ります。また、計画中の紀淡連絡道路の開通後は、四国方面からのアクセスがより便利になり、これまでの明石海峡大橋ルートに加え、阪和高速道路と西名阪道を使うルートと、京奈和自動車道ルートが利用できるようになります。このように、すべてのルートは完全に多重化され、複数経路が確保されているのです。一般道も、四方八方から集まってきていています。

 高速鉄道は、リニア中央新幹線が新首都地域のど真ん中を通り、中央ターミナル駅が設置されています。リニア中央新幹線を利用すれば、東京からわずか1時間で新首都に行くことができます。

 在来線や新交通システムも新首都地域を縦横無尽に走っています。旧来からのJR関西線、近鉄大阪線、JR草津線をはじめ、北陸方面からは高速化された近江鉄道を走る特急が運行されています。その先の信楽高原鐵道も高速化され、途中の分岐からは新設された路線が小都市を経由して中央ターミナル駅まで伸びています。その先もいくつかの小都市を経由して、近鉄大阪線につながっています。これに並行した道路も、第二名神の信楽ICから名阪国道、旧三重県の名張市北部まで整備されており、小都市間の移動に使われています。

 空のアクセスは、3つの空港が整備されています。世界からの玄関口となる関西国際空港へはリニア新幹線で、中部国際空港とは快適な直通特急で結ばれています。国内各地からのアクセスにはびわこ空港も整備され、政府の特別機もここを利用しています。びわこ空港からは、近江鉄道への連絡線を通って首都地域へ入ります。びわこ空港自動車道で車を使ってのアクセスも可能です。各空港は離れているので、台風のときも3つの空港が同時に使用できなくなることは少なくなっています。これ以外にも、大阪伊丹空港、名古屋空港を利用することもできます。

 さて、某国の大統領が日本を訪れましたが、その日程はどのようなものだったのでしょうか。びわこ空港に特別機で降り立った大統領は、総理との首脳会談の後、新首都を視察し、夜は京都迎賓館で歓迎の晩餐会が行われました。翌日は京都と奈良の古都を見物され、関西学術研究都市を視察し、日本の先端科学技術に感心されていた様子でした。その後新首都地域に戻り、ゴルフをしながらの首脳会談が行われました。最終日は伊勢志摩の観光の後、伊勢湾クルーズを楽しまれ、そのまま中部国際空港から特別機に乗って帰国されました。

 全国からは、修学旅行生も多く訪れています。新しい首都と国会議事堂などを見学したあとは、奈良や京都、伊勢志摩へ向かうのが定番となっています。
このように、新首都の周辺には、京都、奈良、伊勢志摩と、世界に誇れる観光地がそろっているのです。さらに新首都自体も、世界的に有名な伊賀・甲賀の忍者や松尾芭蕉の出身地でもあるため、海外からの観光客も数多く訪れています。最近はアジアからの観光客が多いようです。

 新首都地域の住民の政治への関心の具合はどうでしょうか。近年、選挙の低投票率が問題になっていましたが、新首都地域はもともと政治に関心が高く、選挙が大好きで、投票率も高いところでした。首都となったことで住民の政治への関心度もさらに高まり、国政選挙での投票率は他の都道府県をいつも大きく上回っています。これに刺激されてか、全国の投票率も高まる傾向にあります。

 情報ネットワークの発展により、全国的に在宅ワークが普及してきています。新首都地域にも光ケーブルが張り巡らされ、官庁や国会議員の仕事にもネットワークが大いに活用されています。資料の研究も、ほとんどネットワーク上で完了しますが、時にはより詳しい資料が必要になります。しかし、新首都の近くには国立国会図書館関西館があるので、直接出向いて調べることもあります。

 母都市となった上野市には多くの大規模ショッピングセンターがあり、休日に人々は、ショッピングやボウリング、映画などを楽しみます。周辺の都市や、大阪や名古屋まで遠出することもあります。新首都の周辺は自然が豊富でキャンプ場もたくさんあり、アウトドアのレジャーを楽しんだりもしています。家庭菜園や体験農園だけでなく、旧住民から田を借りて米作りをしている家庭もあり、刈り入れられたコシヒカリは伊賀米として最高級にランク付けされています。お父さんは新首都圏にたくさん存在するゴルフ場でのゴルフを楽しむこともあります。


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