国会等移転審 畿央現地調査詳細

1998年10月13日

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国会等移転審 畿央現地調査詳細
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畿央関係の4府県の各新聞を参考に、10月13日に行われた国会等移転審議会の畿央高原地域の現地視察と意見聴取の内容をまとめました。

【概要】

 首都機能の移転を検討している国会等移転審議会の委員らが、10月12日の鈴鹿山麓地域の国際環境技術移転研究センターや鈴鹿国際大学の視察に続いて、翌日の13日、三重、奈良、京都、滋賀の4府県にまたがる畿央高原地域を訪れ、現地視察を行った。

 視察を行ったのは、石原信雄・会長代理・地方自治研究機構理事長、宇野收・関西経済連合会相談役、牧野洋一・全国信用保証協会連合会会長ら、国会等移転審議会の委員9名と、国会等移転審議会事務局職員、板倉英則・国土庁大都市圏整備局長の10名。

【現地視察】

 委員らの一行は、貸切バスに乗り上野市を出発、奈良県山添村、京都府南山城村、三重県阿山町、滋賀県信楽町を順に視察し、京都市内のホテルで意見聴取を行った。視察には4府県の知事も同行し、畿央地域への首都機能の誘致を積極的にアピールした。各地で委員らは、「国有林の面積は?」、「標高は?」、「土地の所有者は?」などの質問を繰り返していた。

 委員らは午前9時ごろ、奈良県山添村伏拝の神野山(標高608m)の中腹、県立神野山自然公園内にある、神野山森林科学館を訪れ、柿本善也・奈良県知事、新谷紘一・県議、馬場日出夫・山添村長、西畑勇・都祁村長、窪田幹蔵・月ヶ瀬村長らが出迎えた。

 柿本善也・奈良県知事は、「せっかくおいで願ったのに、あいにくの天候で…」とあいさつ。続いて、藤原昭・奈良県企画部長が、地図や写真パネルを使って周辺の地形を説明した。

 委員らは神野山森林科学館の展望デッキ(標高500m)から、候補地を15分ほど見学。晴れていれば、甲賀郡、伊賀地域から鈴鹿山脈まで見渡せるはずだったが、あいにくの天気で、鈴鹿山脈や布引山地は霞んで見ることができなかった。

 続いて委員らは、京都府南山城村の田山地区を車窓から視察し、南山城村北大河原のやまなみホールに午前10時すぎに到着した。やまなみホールでは、荒巻禎一・京都府知事や森山茂樹・南山城村長らが出迎え、南山城村の女性職員2名が、絣の着物にあかねだすきの茶摘娘スタイルで、特産の煎茶を委員らにサービスした。

 府の職員が4枚の空撮写真パネルを使って南山城村周辺のの地形などを説明した。関係者らは、「関西学術研究都市から20キロと近く、未開発の土地も約800haある。国立国会図書館の関西館や京都御苑の和風迎賓館の建設計画があり、一帯は首都機能の移転を先取りしている。」とし、立地のよさを強調した。さらに山城地域の歴史などを紹介して、「歴史と文化に恵まれた畿央地域こそ新首都にふさわしい」などと説明した。

 委員らは小雨の中、屋上から周囲の自然を十数分間見学し、「どれくらい住民がいるのか?」、「まわりの丘陵部はすべて自然林なのか?」、「ダムはどの位置にあるのか?」などと、しきりに質問していた。

 委員らは再び三重県に戻り、阿山町川合の阿山町B&G海洋センターの駐車場に特設したやぐらから、阿山町東部から滋賀県信楽町にかけての国有林地帯を、午前11時半頃から約15分間見学した。しかし、あいにくの小雨ののため、滋賀県側まで見渡すことはできなかった。

 阿山町B&G海洋センターでは、北川正恭・三重県知事、今岡睦之・上野市長、森川義久・県議、内保博仁・阿山町長ら、地元の県会議員、市町村長、議員ら総勢28名が出迎え、地元の積極性をアピールした。

 内保博仁・阿山町長は、「上野市と阿山町、隣接する滋賀県信楽町には、1800haの国有林がある。さらに森林組合とゴルフ場などで1200ha、合わせて約3000haの土地が広がっている。土地の権利関係もはっきりしており、用地の取得が簡単。」と、土地取得の優位性を強調した。さらに、松尾芭蕉や焼き物などを紹介して、豊かな文化を育んでいる地域であることを説明した。

 委員らは、樹木の種類や水源などについて質問し、「風光明媚で、すでに土地を所有しているのは魅力。有力な選択の条件となる。」などと感想を述べた。石原信雄・会長代理は、「伊賀盆地は思ったより広いように思う。」と何度も強調し、「高低差が少なくて地形がいい。環境を壊さないで済み、造成しやすいのではないか。」との感想を述べた。

 続いて委員らは滋賀県信楽町の県立陶芸の森を訪れ、国松善次・滋賀県知事から、交通の利便性や環境への取り組みなどの説明を受けた。その後委員らは、甲賀郡内と日野町の丘陵地帯を車窓から見学し、意見聴取の開かれる京都市へと向かった。

【意見聴取】

 意見聴取は夕方、京都市下京区のホテルグランヴィア京都で4府県の知事をはじめ、県議や市町村長などが出席して行われた。しかし、渋滞の影響で委員らの到着が遅れたため、審議時間は予定より45分短い1時間45分に短縮された。

 意見聴取で北川正恭・三重県知事は、「畿央地域は関西国際空港や名神高速道路、東海道新幹線、名阪国道などに近い。国土の中央部に位置し、中部と関西の2つの都市圏の文化や経済基盤を活用できる。奈良と京都に隣接した歴史と文化の宝庫で、豊かな自然環境を持ち、官民が一体となった広域的な連携の経験と実績がある地域である。」などと説明した。

 北川知事は、新都の構想として、「世界に誇る伝統文化や恵まれた自然環境を活かした環境共生都市を想像する。関西・中部圏の都市との連携をはかり、東に偏らない国土の均衡ある発展をめざす。地球環境の保全など国際社会に貢献する、情報公開などによる国民に開かれた政府をつくる。」などと述べた。

 新都市の規模について北川知事は、「鈴鹿山麓と同じ人口30万人、移転費用5兆円。畿央高原と鈴鹿山麓の連携も考えている。」と、鈴鹿山麓と一体となった新都市づくりも強調した。

 荒巻禎一・京都府知事知事は、「新都市だけで都市機能を完結させるのは不可能。政府関係者らは仕事を終えてからでも、大阪や奈良へも往復でき、休日には三重の海の幸、滋賀の湖でレジャーも楽しめる。関西学術研究都市に国立国会図書館関西館が11月に着工、京都御苑に和風迎賓館の建設も進むなど、首都機能移転を先に実施しているようなもので、、こうした設備を十分活用できる。このような条件の整ったところはほかにない。」と、位置の優位さと、受け入れ準備が整っていることなどを強調した。

 杉山孝夫・京都府議会副議長は、「豊かな自然と歴史に恵まれた畿央こそ、首都にふさわしい。」と述べ、森山茂樹・南山城村長は、「首都の候補地になったのは夢のようだ。実現して、過疎の村の地域振興をしたい。」と期待感をあらわした。

 滋賀県からは、国松善次・滋賀県知事をはじめ、山嵜得三朗・県議会議長、中村功一・八日市市長、松山正己・土山町長、北村昌造・滋賀経済同友会代表幹事らが出席した。

 国松善次・滋賀県知事は、「琵琶湖など豊かな水や自然に恵まれ交通の利便性が高く、文化、歴史、学術でも優れた資源があり、最もふさわしい。環境に配慮した新都市に適していて、世界に情報発信できる地域でもある。」と、環境との共存を訴えた。

 松山正己・土山町長は、議会で首都機能の移転を要望する意見書を採択したことを説明し、「伊賀と甲賀は忍者で知られるように古くから交流があり、他に比類ない適した土地である。」と述べた。

 事前質問として挙げられていた、「琵琶湖の環境に与える影響」については、「琵琶湖は、流域1400万人の貴重な水資源として重要な役割がある。琵琶湖と調和した環境共生都市ののモデルづくりを進める必要がある。」とした。

 びわこ空港の滑走路が、開港時2000m、将来的に2500mと、国際線の定期便運行に必要な3000mの滑走路を想定していないことについて、滋賀県側は、「将来2500mへの延長を目標に用地を取得しているが、3000mの拡張に向けた調査は行っていない。気象条件などの用件が満たされるか判断できないが、技術的には可能と考えている。」と述べた。委員からは、「びわこ空港で交通の利便性があるというが、逆にびわこ空港ができないと不便な首都になりかねない。移転より先か、移転と一緒にびわこ空港をやらないといけないのでは。」と、びわこ空港の実現を期待した。

 奈良県からは、柿本善也・奈良県知事や、寺沢正男・県会議長らが出席し、柿本知事は「4府県が一体となって取り組む。」と4府県の連携を強調した。

 学識経験者として、城所哲夫・東京大学大学院都市工学専攻助教授は、「畿央地域は明確に東京に依存しない地域で、かつ東京に匹敵するインパクトを持ち、東京から独立した首都の建設にふさわしい。しかし、丘陵地が多く30万人規模の都市を想定するのはやや難しいので、20万都市のほうが望ましい。近隣には奈良や京都、大阪などの大都市があるので、それらの都市と広域的に連携しながら新都市を作り上げるのが効率的で、鉄道網などを整備すれば広域連携は可能。」と述べた。

 また、吉良龍夫・大阪市立大名誉教授は、「畿央地域は中山間地帯だが、交通が便利で京都や大阪などの通勤圏に入っているので、人口密度が高く過疎化は起こっていない。伊賀・甲賀忍者の歴史があるように、古くから情報網が発達し、特別な文化を持っていた。また、地域コミュニティーの視野が広いのが特徴で、これは首都機能を移転するのに重要な意味を持つ。」と述べた。

 その後、質疑応答が行われ、委員から4府県の一体性について、「4府県にまたがった生活者の連携があるのか。」との質問があり、北川正恭・三重県知事は、「琵琶湖が昔、伊賀上野に位置していた事実があるように、文化は共有し合っている。」、柿本善也・奈良県知事は、「奈良県庁に上野市から通勤している。」と述べた。

 委員からの、「畿央は広範囲に分散しすぎているが、これらの地域を全部使うのか、中心となる地域を絞るのか。」との質問に、北川正恭・三重県知事は、「畿央は土地が取得しやすいのが一番いいところであり、都市は、クラスター配置で対応することに各府県とも異論はない。」と回答した。

 交通の利便性について委員から、「リニア中央新幹線や第二名神高速道路などを広域的な交通網としているが、その計画が実現しなければ、交通網がほとんどないことになる。どの程度計画は進んでいるのか。」との質問があり、荒巻禎一・京都府知事は、「今の現状だけ見れば確かに交通網が発達しているとはいえないが、周辺の既存の幹線から枝線を出せば解決する。また、リニア中央新幹線や第二名神高速道路は計画中であるが、実現性がかなり高い。」と答えた。

【視察を終えて】

 意見聴取を終えて国松善次・知事は、「空港のあるなしで首都機能移転は大きく変わってくるのでは。」と、びわこ空港の必要性をアピールした。

 石原信雄・会長代理は意見聴取を終えての記者会見で、「日本の西に寄り過ぎていないかという批判もあるが、真中論は幅のある議論で、三重・畿央地域は真中ともいえる。意見を聴いていると、京都、奈良、大阪との連携を挙げる一方、東京から独立したスタイルの新首都イメージがあり、それがここの特色。」と、畿央が東京からの独立性を強調しているイメージを述べた。

 さらに石原会長代理は、「他の地域は首都機能を配置する場所のイメージがだいたい浮かぶが、畿央は対象地域が非常に広くて、そうした中に移転にふさわしい場所が点在している印象だった。従って、最終的にどの場所に中心的な機能を置くかが今後の課題になるが、どこが適地に選ばれても、4府県の協力には問題がないようだ。」と述べた。

 石原会長代理は、「京都や奈良の隣で、あまり関心の持たれなかった地域で、初めて現地を見た委員も多く、大変興味深かった。車窓からの視察では段差がかなりある用に感じたが、台地の上の方は比較的平坦で、その部分に施設などを建設すると聞いた。航空写真を見ても、上の部分は広い範囲で平らな部分が多くあった。」と、現地視察をした感想を述べた。

 交通問題について、石原会長代理は、「確かに鉄道では関西線が1本走っているだけだが、ここが候補地として決まれば、周辺に新幹線などの幹線もあり、新しく幹線を整備する必要はないという知事の説明があったので、この問題は選定作業の大きな議論にはならないだろう。」とした。

 国会等移転審議会は10月19日に残る静岡県を視察し、来年の秋に最終的な候補地を首相に答申する。その後、東京と比較して移転を決定する。

【参考新聞記事】(10月14日朝刊、政治面は除く)

三重県

奈良県

京都府

滋賀県


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